電子部品製造会社だからこそ
スマート農業に挑む「タカノファーム」

母体は1979年創業の
東部電子工業株式会社

トマトにバジル、そしてコーヒーの栽培に挑んでいるタカノファームの母体は、1979年に創業した東部電子工業株式会社です。岡山県津山市にて創業した東部電子は、その名の通り、スマートフォンなど機械に組み込む電子部品の製造を主業務としています。

「なぜ電子部品の製造会社がトマトやバジルを作って売っているの?」とお思いになるお客様は多いでしょう。

その理由をご理解いただくために、まず少しだけ、弊社の歴史を紹介させてください。

50年近い歴史で痛感した
ひとつの事業に賭けることのリスク

突然の事業承継
リーマン・ショック

東部電子工業は、2022年で創業43年を迎えました。
いま会社を経営するのは会長の安東和多留(あんどうわたる 写真上)、そしてその弟で代表取締役の僕、安東大輔(あんどうだいすけ 写真下)です。
父が創業し、長らく経営してきた東部電子を僕たち兄弟が継承したのは、およそ20年前のこと。父の急逝に伴う事業継承であり、当時まだ25~6歳だった僕にも、30歳になるかどうかだった兄にも、あまりに突然のことでした。それから数年は2人でがむしゃらに働き、ありがたいことにお仕事の量も、従業員数も増えてきていましたが、そこへリーマンショックの煽りを受けます。

2010年の正月明け、取引先から「もうお宅に仕事は出しません」と宣告され、頭が真っ白になりました。従業員はいるけど、お願いできる仕事はない。お給料もいつまでも払えない。どうしようもなくなり、共働きのパートナーのいる方をはじめ、父の代から頑張ってくれていた方にまで、僕たちはリストラを敢行したのです。

この出来事で会長と僕が痛感したことは、電子部品の製造というひとつの事業、少数の取引先だけに事業を集中させておくことによる、共倒れの恐ろしさでした。

「3本の矢」をめざし事業を多角化

アグリ事業部も創設へ

そこで会長は、東部電子工業の事業多角化に踏み切りました。まず挑戦したのが葬祭業界。いまから十数年前に、東部電子は葬祭事業部きずなを創業。岡山県の津山市、美作市にセレモニーホールを所有し、地域の葬儀風習を熟知した密着型の葬儀会社として、今日まで実績を積み上げてまいりました。

そして2019年4月、東部電子の3本目の矢として始めたのが、アグリ事業部です。はじめに栽培に取り組んだのは、スイートバジル。縦型水耕栽培と呼ばれる手法で、ハウスの中にマンションのような縦に長い容器をいくつも設置し、ここにバジルを植え付けます。

途中、カビによる全滅被害に遭いながらもおよそ1年間、バジルの栽培を続けたところで、次に挑戦したのがミニトマトです。少量の培養土の中に苗を入れ、肥料を溶かし込んだ水を適量だけ与えて育てる水耕栽培で生産を行っています。


またトマトと同時期に、コーヒーも始めました。バジル、トマトに比べ、コーヒーは日本人にとって身近な農作物ではありませんが、生活に密着した親しみ深いもの。特に「珈琲」の漢字を生み出した洋学者であり、津山藩の藩医であった宇田川榕菴(うだがわようあん)先生ゆかりの津山市とはご縁が深く、興味深い農産物だと思い、苗木を育てることにしました。

携わる人がしっかり休めて
利益も出せる「スマート農業」の実現へ

生産の安定と効率化を図る

単に土に作物を植え付けて収穫を待つのではなく、機械を使って必要栄養素の入った水を適量与え、さらに水を循環させて作物を育てることを水耕栽培と言います。また、与える水の量や質を機械でコントロールするなど、先端技術を活用して農業の負担軽減や、収穫量・効率のアップなどを図る農業手法のことを、スマート農業と呼びます。

タカノファームが行っている手法も、スマート農業と呼ばれるもの。バジルとトマトに与える水の量や循環、生育環境を良くするための湿度のコントロールなども、基本的には機械が24時間体制で行っています。

このため、人間が手を出すのは植え付けや収穫のときがメイン。一般的な農業のように、人の目による常時の管理や作業は必要ありません。だからタカノファームの従業員は基本的に土日がお休み、勤務時間も8:30~17:30までとしていて、実際、この勤務体制である程度の生産量を確保できています。

「昼も夜も、季節も関係なく忙しい」「労力の割に利益が少ない」というようなイメージのある農業を、しっかり休めて利益も出せる仕事にしていきたい。この点も、僕たち東部電子工業が水耕栽培を選び、スマート農業にこだわってアグリ事業部を展開していく理由のひとつです。

専門家の意見も伺いながら、立ち上がってくる問題を一つずつ解決し従来の農業へのイメージを払拭して新たなスマート農業のスタイルを確立すること。これもタカノファームが地域と農業の未来のために達成すべき役割だと考えています。

私たちの原動力

人々の笑顔、幸せ、団らんの中心に
タカノファームの商品があってほしい

声と笑顔が私たちの原動力に

僕たちがアグリ事業部を発足させて2022年でまる3年。
露地栽培のものに比べて柔らかく、風味もマイルドなバジルは、特にプロの料理人から「おいしくて無駄なく使える」とご好評を頂いております。
ミニトマトには、晴れの国おかやまのイメージからシャイントマトと命名し、地元のレストランやスーパー、通信販売にて消費者の皆さまの食卓へも少しずつ届くようになってきました。

機械の一部品をつくる下請けの製造業者では、消費者の皆さまから直接お喜びの声をいただいたり感謝していただけることはありません。

僕たちの作る部品が使われた製品を見て喜ばれることはあっても、なかなか部品の一つひとつに思いを馳せていただくのは難しいからです。しかし僕たちはいま、アグリ事業部を通して消費者さまから直接お喜びの声をいただくことにこの上ない幸せを感じながら、日々の仕事に取り組んでいます。


おいしいものを食べているとき、人は必ず笑顔になります。幸せな気持ちになります。僕たちの作るもので消費者さまに幸せな気持ちになっていただけること、またその反応を、直接感じられることが、僕たち東部電子工業にとっては本当に本当にうれしいことなのです。

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